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身近な植物を使うバスケタリーの世界 (前編)

(機関誌ミドリ140号2026)

身近な植物を 使うバスケタリー の世界(前編)

 横浜在住の関島寿子さんは、植物素材を使ってバスケタリー作品を制作する日本を代表する作家で、籠の技法を現代的な立体造形アートへと醸成させた第一人者です。
このたび、関島さんのご自宅へお伺いして、バスケタリー制作の基本について話を聞きました。

 



 バスケタリーについて  

 手短に解説すると、身近な樹皮、蔓、植物繊維などを用い、編む・結ぶ・組むといった行為を構造的に解析し、立体造形として制作していくものです。単なる「かご」を作るのではなく、素材の性質や編み構造そのものを探る実験的な造形アートなのです。
さあ言葉で説明しても始まらないから、まずは庭に出て、素材を探しましょう。

(自宅の庭へ)

 庭ではいろいろと育てていますよ。素材として利用するんです。
 これは“チョマ”。カラムシとも言いますが、イラクサ科の多年草で、茎の皮から強くて上質な繊維質が取れるので、よく造形に使っています。作家はよく庭で育てていますね。お庭にチョマがたくさん生えていたら、きっと造形作家さんの家でしょうね。
ここにあるオカメザサもよく使いますし、クワやエノキの樹皮だって使えます。
今回はこのシュロを使いましょう。ヤシ科の植物で、熱帯地方によくあるココナッツの仲間ですが、庭先や公園によく生えていますよね。幹についている茶色の皮毛はシュロ縄やタワシ、ホウキに使いますが、ほとんど海外からやってきていますね。
今回は幹の皮毛じゃなくて葉っぱを使いましょうね。

(作業場に戻って)

 まずは水を含んだ布で葉をふき取ります。キレイに見えて、意外に汚れています。 次は素材を分けていきます。剪定鋏を使って扇状になっている葉の部分と葉柄とを分けて、この扇状の葉の切れ込み事に分けて割いていきます。すると一枚の葉のようになる。この葉の下に着く固い葉脈(主脈)があり、これを手を切らないように注意しながら取り除くと、縦に長い葉脈部分が2枚残ります。
 これを使うのですが、そのまま乾くと丸まってしまいますので、2~3枚同時に結んでいきます。これをせっせとやる。このひと手間をしておくと、後で使いやすいです。こういう作業は実に簡単で、華々しいことはないけど大事なこと。


6種類の構築法

 この間も常に、どんな素材なのか作業しながら学ぶんです。主脈の固さだったり、葉脈の表裏で光沢や手触りが違ったり、長短だったり、どんな造形ができるのか常に考えていく。ぼーっと作業なんかしていてはダメなのよ。
基本の編組(へんそ)は植物や布、糸など繊維状にした素材を編んだり、組んだりして造形する方法です。その方法と向き合ってきて、6種類の構築法があることを突き詰めました。それは「絡める」、「結ぶ」、「組む」、「巻く」、「織る」、「もじる」という種類に分けられる。
このパターンを基本にして、素材の持つ性質をよく考えてあげて立ち上げていく。
 素材は庭に生えている植物の皮や茎、葉だっていいし、植物じゃない日常生活にある身近なもの、新聞紙や段ボールだっていいわけで、その形状や固さ、反発力といったそれぞれの素材の特徴をみて造形ができるんです。
この素材の性質と構築法から形態が決まるわけですが、この型に留まらず、これを越えた先に立体造形アートの特徴や面白さがあるのだと思っています。

植物という素材と対峙する

 今やっていることだって、単なる作業ではなくて、この素材の性質をよく知る時間なんです。そして自然にわかってくるのかな。ほらだって、これ自体が「結ぶ」工程を加えているんですから面白い。
下処理してるって決めてかからないこと。これだって、一つの面白い造形なの。このことで色々な気づきが生み出される。
大学で教えることもあるんですが、できるだけ設計図やマニュアルなんて見せないようにしています。まじめに予習している方もいて、どうしても本にあるような作品を作りたがる。目標がないと歩けないのね。
今やっている素材との対峙が大事なことだと、気付かせたいのよね。
(次回につづく)


シュロ葉の扱い

1.
葉と葉柄を
剪定鋏で分ける
2.
まとまった葉を
1枚ごとに割く
3.
葉と葉脈を
分ける
4.
2~3枚を
束ねて折り、結ぶ

 

 


プロフィール 関島 寿子(せきじま ひさこ)

造形作家。津田塾大学英文科卒業後、1975年に渡米し、現代工芸に触れた経験を背景に、植物素材を用いた立体造形を制作。現代のバスケタリーの第一人者。著書に『Basketry』(講談社インターナショナル1986)や『バスケタリーの定式』(平凡社改訂新版刊行2024)。作品収蔵に横浜美術館、国立工芸館、ヴィクトリア&アルバート博物館など。

展覧会 『概念を編む』予定 2026年11月14日(土)から2027年3月20日(月・祝)まで 菊池寛実記念 智美術館(〒105-0001 東京都港区虎ノ門4丁目1−35 智美術館 1階 西久保ビル)

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