ナショナル・トラストについて
ナショナル・トラストのはじまり
ナショナル・トラスト運動とは、英国で19世紀の産業革命期に始まった環境保護運動です。
産業構造の大きな変化に伴い、都市開発が大気汚染や水質汚染などを生み、市民の生活環境を悪化させました。また、社会構造の変化により、大地主の所有するカントリーハウスといわれる別荘地やその周辺の森林や田園地帯などが荒廃していきました。
そこで、自然豊かな英国田園風景を、全市民及び次の世代への公共的な財産としてとらえ、保全する活動が始まりました。無秩序な開発行為から、自然環境や歴史的環境を守るため、市民の手から始まったものがナショナル・トラスト運動です。
この運動を推進する団体として「ザ・ナショナル・トラスト」が1895年に設立されました。地道な活動を続け、ナショナル・トラスト法(1907年)が制定されました。現在では、国民の賛同を得て、団体のもとで保存される土地や建物は永久に守られる制度が確立しています。
かながわのナショナル・トラスト運動
かながわのナショナル・トラスト運動は、イギリスで発展した運動をモデルにして、神奈川県が設置する基金と運動体となる財団が連携して、都市化の著しい県内の身近なみどりを守り、育てる運動として昭和61年にスタートしました。今日までに、保全しているトラスト緑地は計86haを超えております。
トラスト緑地は、ボランティアの市民団体の協力により自然再生や維持管理活動が行われ、良好な自然環境が保全されています。
かながわトラストみどり財団による緑地保全は、秦野市内の葛葉緑地から始まりました。1987年にかながわトラストみどり財団と秦野市が連帯して、財団と地権者との長期間にわたる緑地の保存契約に着手しました。
都市化が進む中、蛇行した渓谷の自然環境を、次の世代に残していくためにも、行政や市民、そして財団が連携して運動を行うかながわのナショナル・トラスト運動にご協力ください。
日本でのはじまり
日本でのナショナル・トラスト運動は、古都鎌倉から始まったとされています。日本では各地で1960年代の高度経済成長期に各地で、宅地開発の波が押し寄せ、鎌倉、鶴岡八幡宮の裏山「御谷(おやつ)山林」にまで伸びてきました。
そこで、市民運動が立ち上がり、鎌倉風致保存会が設立され、開発を阻止する活動をしたことが日本でのナショナル・トラスト運動のはじまりとされています。また、この運動が古都保存法成立の契機となったと言われています。
このほか、北海道斜里町の「知床国立公園内100平方メートル運動」や和歌山県田辺市の「天神崎市民地主運動」などで運動が展開されてきました。