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かながわのナショナル・トラスト運動の歴史と将来展望③ 最終回

(機関誌ミドリ138号2025)

かながわのナショナル・トラスト運動の歴史と将来展望③最終回

4神奈川の歴史的環境の保全

公益財団法人かながわトラストみどり財団理事長 引地孝一

歴史的環境とは、地域の歴史の中で形成された、文化財・遺跡・町並み・自然景観・行事・習俗などの総体と定義づけられています。

「歴史的環境」が公的に初めて使われたのは1969年の新全国総合開発計画においてです。1970年代は高度経済成長による住宅開発、ゴルフ場開発、工業団地建設などで、身近に慣れ親しんだ風景、自然、古い由緒ある街並みや建物が消えて行きました。このことに多くの国民が危機感を持ったことが、歴史的環境の保全に動きだすきっかけになりました。

県内における歴史的環境の保全に対する取り組み

本県の代表的な観光地の一つ鎌倉は「武家の古都」をテーマに世界遺産登録に向けて準備を進め、1992年「古都鎌倉の寺院・神社」として世界遺産の暫定リストに記載されました。その後、2007年7月に県知事と関係する鎌倉市、横浜市、逗子市の市長と教育長を構成メンバーとする「世界遺産登録推進会議」が発足しました。鎌倉の世界遺産登録の内容は、歴史的価値のある24の国指定史跡を核とし、2012年に「武家の古都・鎌倉」として推薦されました。 その後、ユネスコのイコモス(国際記念物遺跡会議)から「武家による政治と文化の伝統は理解できるが、現在残っている遺産ではその価値を証明できない」として「不登録」が勧告されました。ユネスコの世界遺産委員会で正式に「不登録」が決まると、再度推薦できなくなるので審議される前に取り下げ、再推薦の機会を残しました。世界遺産登録は1978年から始まり、2025年現在、日本では文化遺産21件、自然遺産5件、計26件が指定されています。最近の指定では2025年に佐渡島の金山が登録されています。そのほか、登録予定として、暫定リストには鎌倉、彦根城、飛鳥、藤原の宮都など6箇所あります。

鶴岡八幡宮舞殿

鶴岡八幡宮舞殿

5今後のナショナル・トラスト運動の展望

2025年6月に当財団は40周年を迎え、これを契機にこれからのナショナル・トラスト運動の展望を考えてみたいと思います。今の時代は行政だけが公的な仕事をするのではなく、NPOやボランティア、そして当財団のような公的組織が、県民の皆さまと協働し、自然や歴史的環境の保全を進めることです。時代の流れを考えれば、「地方の時代」から顔の見える「地域の時代」としていくべきです。そのために市町村や公的団体等は課題に真摯に向き合い、付加価値を付け、共感を得る事が大切です。国は森林保全のため2024年度から森林環境税を徴収し、それをもとに森林環境譲与税として全国の都道府県と市町村に配分しています。今後の事業展開として、神奈川にある歴史的環境や建造物の保全に当財団がどう関わるかも、課題です。定款や県のトラストみどり基金にも「緑の保全と歴史的環境の保全」が明記されていますので、時代の変化を受けとめ、どう取り組むべきかの議論を深める必要があります。これからの時代は一つの組織だけで何かを進めるのではなく、同じ目的を持った人々や団体、自治体が協力して地域の活性化や自然の保護、歴史的環境の保全を進めることです。

今後のナショナル・トラスト運動を息の長い運動として、発展させるために財団の役員、職員、会員の皆様のご意見を伺うとともに、知恵ある県民の皆様からも、財団に、ご意見をいただければ、幸いです。人はそれぞれ、自然保護や歴史的環境の保全に様々な想いを持っています。今ある神奈川の自然や歴史的環境は、私たちだけのものではありません。次の世代の人々に、さらに、その次の世代の人々に引き継いでいく責務が、私たちにはあります。県民の皆さまと力を合わせ、かながわの緑と歴史的環境の保全にこれからも、粘り強く、前向きに取り組んでまいります。

参照文献

歴史的環境の保全と再生の系譜(木原啓吉)
(財)トラストみどり財団20年史
神奈川力構想・基本構想

プロフィール

引地 孝ー

引地 孝ー(ひきちたかいち)
横浜生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒業。神奈川県に就職後、様々な部局を経験。福祉部長、県教育委員会教育長を務めた。県退職後は神奈川県信用保証協会会長、YRP常勤監査役などを務め、現在、社会福祉法人城山学園常務理事。

 

 

連載

かながわのナショナル・トラスト運動の歴史と将来展望①
かながわのナショナル・トラスト運動の歴史と将来展望②
かながわのナショナル・トラスト運動の歴史と将来展望③

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