
絵と文/東郷なりさ(絵本作家・イラストレーター)
2年前の5月、家のベランダに吊るしてあった湯たんぽにスズメが巣を作りはじめ、毎日窓の外でチュンチュン鳴いているのを楽しく聞いていた。ところが何が原因だったのか抱卵の途中で放棄してしまった。
しばらくして穴から巣を引っ張り出してみた。産座はシュロの樹皮の繊維を丸く編んで作られていて、鳥の羽が差し込まれていた。中には卵が3つあり、1つは割れた殻だった。それが放棄の原因だろうか。孵かえらなかった卵を見るのは悲しい。産座の周り部分は隙間を埋めるようにたくさんのイネ科の草が詰め込まれていた。薬草として殺菌効果を狙っているのかヨモギが入って
いたのも興味深かった。
当時4歳だった娘と一緒に巣に入っていた様々な鳥の羽を調べてみた。一番多かったのはハト類で44枚。お腹の羽が多い。ハト類は根元の羽糸がふわふわと密生しているのが特徴的で、娘も識別できるようになった。次に多かったのが黒いカラス類の体羽で19枚、そしてムクドリの風切羽15枚。メジロとヒヨドリも入っていた。一番長かった羽は11.5㎝あるドバトの風切羽だった。近所の住宅地で見つかるものを手当たり次第に集めてきたようだ。まわりは住宅街なのに、水鳥のカルガモらしい羽が2枚あって驚いた。
スズメは主に人工物の隙間や穴の中に巣を作るため、巣の中を目にすることはまずないので貴重な経験だった。
東郷 なりさ
絵本作家、イラストレーター。ブログに「クイナ通りSoi17」
https://narisatogo.blogspot.com/