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神奈川県内で資源循環する木質バイオマス発電

チップ化

神奈川の木材利用の取り組み①

神奈川県内で利用を目的に植えられたスギ・ヒノキなどの人工林(民有地)は広大で約3.1万haといわれています。しかし林業の停滞から、手入れが行き届かず荒廃した状態となり、水源のかん養など森林の多面的な機能が低下するほか、自然災害を引き起こすことも懸念されています。

人工林は、農業と同じように植栽した木を間引く「間伐(かんばつ)」といった作業が必要で、これを怠ると不健全な状態となることや、林床に日光が入らず下草が生えないことで、大雨などの際に土壌が失われてしまいます。また、切り出しても採算がとれないことから放置され、倒木が発生する危険な林地も見られます。

人工林は植え育て、木材を生産し、また植樹を繰り返していく保全形態が重要な価値の一つといえます。

県内の木材利用を紹介する第一段として、間伐材を利用したバイオマス発電用チップを生産する秦野市菖蒲にある神奈川県森林組合連合会にて、生産販売課の古藤智徳氏に話を伺いました。

(財団発行:機関誌ミドリNo.120号記事より)

 

土場に積まれた間伐材
大きな機械ですね―—

古藤-

令和2年度より導入した発電用チップ生産用の木質高速破砕機「ウッド・ハッカー・メガ(緑産)」です。県内で取り扱いがあり、メンテナンスの有利性も考えてこの機械を導入しました。

全長6m、重量13tで、間伐材など時間当たり最大120㎥の生産能力があり、最大直径56㎝の丸太も投入できる他、枝葉、木皮、竹なども破砕可能です。クローラーがついており自走が可能ですので、山間部の丸太の集積箇所への移動もできますし、運搬車両に直接チップを吹くことができますので、運用面でも助かります。

チップ化の流れですが、丸太をそのまま直接投入するとベルトコンベア方式で機内に取り込み、内部に円筒形の大径切削ドラムが回転し、受け刃と大径ドラムにより連続的に切削していきます。そして事前に設定したサイズのチップを反対側から排出します。細かくすると最小3.5㎝まで可能です。

操作は簡単で、走行や切削など通常作業に必要なすべての機能は離れた場所でリモコン操作できますので、丸太を投入する重機に乗りながら、1人作業ができ人的コストも抑えられます。

チップ化される木材について教えてください

 

木材としては、それまで山間部で残置されていたような未利用の間伐材で、スギやヒノキなどの針葉樹がほとんどです。人工林で間伐された樹木は細く状態が悪いこともあって、木材としての利用はほとんどできず、林地の土留等による利用以外は残置といって、捨て置かれた状態になります。この未利用だった間伐材が有効に活用できないかと検討し、進められたのが木質バイオマスのエネルギー利用だったのです。

さっそく、発電用チップ資材として生産することを始め、これまでになかった形で流通しはじめました。もちろん、主に林業関係者が山林から間伐材を切り出し、この土場に搬入してもらえるよう、間伐材に安定した購入価格を設定しています。

 

チップ用間伐材
丸太のまま乾燥させ、チップ化を待つ間伐材
木質高速破砕機
神奈川県森林組合連合会所有の木質高速破砕機

令和元年10月より事業を開始し、入荷を始めたのですが、当初の予定をはるかに超える月300トン以上の入荷があり、以前、中古で導入していた前のチッパーではとても処理しきれない反響でした。そこで令和2年度より現在のチッパーを導入し、事業のテコ入れにより事業規模の拡大をすることができました。

チッパーの横にある丸太ですが、だいたい大型トラック4台分。これを1日もかけないで処理でき、月500トン程度生産できています。

かなりの数の丸太が置いてありますね

林業関係者がひっきりなしに持ってきてくれます。これを土場に積み上げ、約3か月以上乾燥させなければなりません。チップにできる状態になるには含水率50パーセント以下の丸太です。搬入してすぐにチップにすると、チップ山の表面は乾くかもしれませんが、内部は乾燥しない状態になります。広い土場で丸太のまま乾燥させ、順々にチップ化して出荷していく流れが最善ですね。

チップ材その後は?

生産した全てのチップ材を発電所の「横須賀バイオマスエナジー」へ出荷しています。まだ始まったばかりですが、未利用だったスギ・ヒノキなどの間伐材が山林から運ばれ、チップになってエネルギー利用される仕組みに期待しています。

また、大都市圏にある神奈川県でこのようなバイオマス発電が可能となれば、資源として再生できる樹木と利用される電気が地域内で巡り、循環型社会の基礎となるほか、林業や山間部の地域活性化につながると期待されます。

(次回につづく)

 

取材・文:財団事務局 壹崎昌和

【かながわトラストみどり財団 2021春「ミドリ」no.120 掲載】

土場全景
土場の全景。手前の全てがチップ用間伐材
その日のうちに処理
チッパー横に積まれた丸太。これから数時間の作業でチップになる
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