機関誌「ミドリ」について


2017ミドリ107号「光るミミズって見たことある?」その3

ミドリ107号
2017年冬号


ミドリ107号

この号の電子出版ミドリを閲覧する

ヒラタキノコバエの一種

チリメンタケとヒラタキノコバエの一種

 くずはの家では、例年秋に行っているきのこの観察会を、今年は6月25日(日)に「きのこウォッチング~初夏の身近なきのこ入門」として行いました。
 観察会が終わり、採取したきのこを林に戻そうとしていた時、チリメンタケというきのこの表面に何かの幼虫がいるのを見つけました。 きのこの表面に張った粘液の膜の下に、長さ2cmほどで体節に黒い点がある細長い幼虫がいました。
 私は以前、発光生物の宝庫である八丈島に、発光キノコやニッポンヒラタキノコバエという発光性のキノコバエを見に行ったことがあり、その際見たキノコバエの幼虫と今回見つけた幼虫がとてもよく似ていたため、直ぐにこの仲間の幼虫ではないかと思いました。
 このヒラタキノコバエの仲間は日本国内に何種類かいて、その全てが光るわけではないとのことでしたので、キノコバエの付いたチリメンタケごと家に持ち帰り、夜、暗室のようになった室内で、発光の確認をしました。
 高感度に設定したカメラで20分間露出したところ、幼虫の発光を写すことができました。 さらに真っ暗な空間に慣れた眼は、この幼虫の出す幽かな光を捕らえることができ、肉眼でも発光を確認することができました。
 神奈川県内でヒラタキノコバエの仲間の発光性幼虫についての報告があるか、神奈川県昆虫誌(2004年,神奈川昆虫談話会)をはじめ、生命の星・地球博物館、発光生物の研究者への問い合わせ等で探しましたが、記録は無く、どうやら神奈川県内ではこれが初確認となるようです。
 ただ、いろいろな方に伺う中で、キノコバエの仲間を分類している研究者は現在日本に一人もいないらしく、これ以上は調べられないことが分かりました。
 とにかく、ヒラタキノコバエの仲間の発光する幼虫が葛葉緑地にいて、神奈川県では現在ここだけで確認されているということは確かなようです。
 元々は、秋に見られないきのこを探してみようということから始めた観察会が、瓢簞から駒、とんでもないものの発見に繋がりました。

 
おわりに
 今でこそ、葛葉川のもたらした多様な環境は、葛葉緑地においてさまざまな生き物を育んでいますが、1960年(昭和35年)頃の航空写真を見ると、葛葉緑地付近は薪炭林として利用されていたようで、急斜面にもかかわらず、皆伐された様子が見て取れます。 葛葉緑地にムササビやニホンリスなど樹上性のリスの仲間が見られないのはそのせいだと思われます。
 地上を歩く生き物や羽のある生き物は、その後移り住んできてここに定着しました。 周囲が開発されていく中で、決して広くはない葛葉緑地ですが、それらの生き物たちのシェルターになっているようです。 皆様のお力による緑地の保存で、生き物たちのすみかが未来永劫に維持されていくことを願っています。
 

ヒラタキノコバエの一種の様子

      おわり

2017ミドリ107号「光るミミズって見たことある?」その3

目次
その1 葛葉緑地の環境
その2 ホタルミミズ
③その3  ヒラタキノコバエの一種
高橋 孝洋
元神奈川県立高等学校生物教諭 1980年より秦野市内のホタル類の生息調査および保護活動を行う。 2006年から自然観察施設「秦野市くずはの家」所長に就任。 発光する生物に興味を持ち、葛葉緑地内から2015年ホタルミミズを発見、2017年発光性ツノキノコバエの幼虫を発見した。
葛葉緑地へのアクセス
電車・バスの場合
●小田急線秦野駅北口よりバスで約7分
神奈中バス2番乗り場から出るどのバスでも、
停留所「宮上」を通ります。
●菩提経由「横野入口」行き
●大倉入口経由「渋沢駅北口」行き
●榎木堂経由「高砂車庫」行き
バス停「宮上」下車徒歩約3分(少し戻る)
車の場合
無料駐車場あり(25台)

ミドリ107号
2017年冬号


ミドリ107号

この号の電子出版ミドリを閲覧する

表紙:ヤマユリ

自然への一歩 冬から春へ 池のにぎわい
阿木 二郎   手塚 真理
葛葉緑地で地質学にふれる
生命の星・地球博物館 学芸員 笠間 友博
光るミミズって見たことある?
~葛葉緑地はいろいろな生き物に出会えるよ~
自然観察施設・くずはの家 所長 高橋 孝洋
葛葉緑地 アクセスMAP
緑の募金
平成29年度
緑化運動・育樹運動コンクール受賞作品
緑の募金 緑の募金による活動報告
一里塚・
四方山話3⃣
「ムササビ」
神奈川県森林インストラクター 滝澤 洋子
事務局だより ●小網代の森
 アカテガニ放仔観察会2017
●感謝状贈呈、主催イベント ほか
ヤマユリ自生地
再生チャレンジ始動
久田緑地での
取組事業
製材体験イベント