機関誌「ミドリ」について


2015ミドリ97号「英国ザ・ナショナル・トラストのいま。(後編)」その1

(前編)96号
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前編に引き続き、後編1~3です。
前編はこちらから ミドリ96号特集ページ

-英国ザ・ナショナル・トラストの特徴として、ボランティア参加について教えて下さい。
小野まり
 通常のボランティアは、トラストが保有するプロパティ(Property・資産)ごとに活動しています。報告書では年間6万人を超え、400万時間もの活動を行っているそうです。世代としては、仕事をリタイアした年配の方が大半ですが、最近では就職難からか、若いボランティアの方もいます。多くはナショナル・トラスト地である歴史的建造物の部屋のガイドをしています。

 ボランティアの活動時間はだいたい1時間~2時間。寒い時期などは1時間ごとに交代で、休憩を2、30分とります。どこのプロパティにも専用のボランティアルームがあって、暖かい紅茶などを飲むのです。

 重要なのはアフターヌーンティーの文化として、お茶とお菓子が必須なこと。みんなで楽しく仕事して、終えてのんびりお茶をしながら井戸端会議。これが地元ボランティアさんの醍醐味になっています。(笑)
 また、ボランティアだけに配られる会報もあって、自分たちプロパティ・オリジナルのスコーンレシピなど紹介しあったりしています。
 

写真:ケンブリッジ近郊にあるウィンポール・ホール(Wimpole Hall)。ガーデンもさることながら、1700年代の荘厳な建物は中のインテリアも完璧な状態で保存されている。各部屋でガイドを務めるのはもちろんボランティアたち。

―ワーキング・ホリデーも活発だと聞きますが。
小野まり  ワーキング・ホリデーは1週間から10日間ほどのプログラムで、「ワーキング・ホリデー」という冊子があります。プロパティごとに、日時や内容、難易度などが詳しく書かれており、普段仕事をしていて忙しいビジネスマンが、休暇のリフレッシュを目的に、冊子を見て、応募するわけです。
小野琢正  ヨーロッパの人は、ボランティアすることが好きですね。自然の中、みんなで同じ釜の飯を食べ1週間の住み込み仕事。しかも、その参加のために2~3万円払うわけです。もちろん、仕事だけでは長く続きません。午前は活動し、昼からはゲームをしたり、パブにいったり、公開していないボランティアだけ特別に入れる場所に行けたりします。

 また、プログラムはチーム制でリーダーが入ります。そこでは自分たちで作業分担を話し合って決めます。スタッフが指示するのではなく、彼らにまかせてあります。決められた仕事だけでは面白くないですから、自分たちで戦略を作り、実際に作業を負うのです。
 ワーキング・ホリデーにしろ、ボランティアにしろ、しっかりとした拠点があって、みんなが集える。自分たちのポジションを与えられるところが重要ですね。




写真(上下):ワーキング・ホリデーの一コマ。様々な保全活動があるが、適した年齢や重労働の割合など、パンフレットでは分かりやすく紹介されている。

      後編その2へ

2015ミドリ97号「英国ザ・ナショナル・トラストのいま。(後編)」

目次
①後編その1 ワーキングホリデー
後編その2 リーマン・ショックを乗り越えて
後編その3  積極的なボランティア活動


=プロフィール=
小野琢正氏
独自の「水性」シルクスクリーン版画を生み出し、国内外の美しい自然を描き続ける。1999年日本ナショナル・トラスト協会のオフィシャル・アーティストとして英国に渡り、トラスト保全地を描く。
 2001年からトラスト保全地で、日本人として初めて3ヶ月に及ぶ巡回展「HENRO」展を開催。その後も英国ナショナル・トラストにて毎年開催され、今年で15年目を迎える。
(オフィシャルページ http://www.takumasaono.co.uk)

小野まり氏
 NPO法人ザ・ナショナル・トラストサポートセンター代表及び同英国事務局長。著書に「図説・英国ナショナル・トラスト紀行」「図説・英国湖水地方」「図説・英国コッツウォルズ」「図説・英国インテリアの歴史」(河出書房新社)などがある。(ザ・ナショナル・トラストサポートセンター http://ntscj.org)

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自然へ一歩 ムサシノキスゲ 浅野文彦
トラストリポート インタビュー/英国ザ・ナショナル・トラストのいま。(後編) 小野琢正、小野まり
トラストニュース 財団創立30周年を迎えて 
 財団理事長 川本守彦
フィールドノート わかりやすい絶滅危惧種と、そうでないものたち 秋山幸也
イベント 森林ボランティア、自然観察会など
事務局だより おたよりほか