機関誌「ミドリ」について


2015ミドリ96号「英国ザ・ナショナル・トラストのいま。(前編)」その3

ミドリ96号
2015年春号


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―ナショナル・トラストによって保全されることで地域も潤っているわけですね。
小野まり  ナショナル・トラストが保全すると、その屋敷や城郭が一番華やいだ状態を正確に復元していきます。たとえば、19世紀の大英帝国全盛時期の室内様式を家具や壁紙、カーテンをあつらえ、外装から庭園までしっかり整備したところで一般公開します。
 ショップ

写真:ナショナル・トラスト・ショップ:各プロパティにショップが併設されており、日用雑貨やお土産などのオリジナルの商品が並ぶ。

小野琢正  もちろん、全てを公開するわけではなく、部分的な公開。しかも必要あれば改修前の部屋を公開して、「このアンティークベットを修繕するのに〇ポンドかかります」というパネルとともに募金箱が置いてあります。そして数日後には、「このくらい貯まったので、あといくら必要です」になる。やはり実際に目の前のもので寄付を呼びかけると効果があります。
小野まり  そして、それまで廃屋同然だったところに人がどっと押し寄せるわけです。ナショナル・トラストが所有すると観光地になるのです。トラスト地になる当初は、近隣住民は騒がしくなるといって反対しますが、いつの間にか、ボランティアになって、プロパティ自慢のガイドをしていたりします。
小野琢正  一昨年、行政(カーディフ)が所有する別荘地もトラスト所有となりました。学校として使っていたけど、由緒ある古い建物は維持費がかかるため、建物の一部を寄贈したりするのです。また、庭園なども定期的な費用がかかるので、庭だけ寄贈することも多いようです。ナショナル・トラストは集客力、資金力がありますので、地域行政との連携のもと、環境保全と観光の両立でプロパティを守っていくわけです。
 墨絵ワーク・ショップ

写真:墨絵ワーク・ショップ:ナショナル・トラスト内で開催した墨絵ワークショップの一コマ。各プロパティには教育部もあり、子供向けの様々なイベントを展開している。


ミドリ96号前編(おわり)

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2015ミドリ96号「英国ザ・ナショナル・トラストのいま。(前編)」

目次
前編その1 英国ナショナル・トラストへ
前編その2 会員400万人
③前編その3  資産(プロパティ)保全の資金調達


=プロフィール=
小野琢正氏
独自の「水性」シルクスクリーン版画を生み出し、国内外の美しい自然を描き続ける。1999年日本ナショナル・トラスト協会のオフィシャル・アーティストとして英国に渡り、トラスト保全地を描く。
 2001年からトラスト保全地で、日本人として初めて3ヶ月に及ぶ巡回展「HENRO」展を開催。その後も英国ナショナル・トラストにて毎年開催され、今年で15年目を迎える。
(オフィシャルページ http://www.takumasaono.co.uk)

小野まり氏
 NPO法人ザ・ナショナル・トラストサポートセンター代表及び同英国事務局長。著書に「図説・英国ナショナル・トラスト紀行」「図説・英国湖水地方」「図説・英国コッツウォルズ」「図説・英国インテリアの歴史」(河出書房新社)などがある。(ザ・ナショナル・トラストサポートセンター http://ntscj.org)

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自然へ一歩 人によりそう春の草花たち 向田智也
トラストリポート インタビュー/英国ザ・ナショナル・トラストのいま。(前編) 小野琢正、小野まり
緑を育む ボランティア活動に参加しよう 吉武美保子
オアシス 日本の寄付の現状と課題 早坂毅
イベント 森林ボランティア、自然観察会など
事務局だより 緑の募金活動、会員掲示板、おたよりほか