機関誌「ミドリ」について


2014 ミドリ95号「無花粉ヒノキの発見と無花粉スギの広がり(3)」

ミドリ95号
2014年冬号


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なぜ神奈川県で初めて見つかったのでしょうか。
斎藤
 こういった地道で確率論的な調査研究を行っている地域が、神奈川県のほかになかったというのも理由のひとつでしょうね(笑)。
 
  それと、無花粉スギの研究の進んでいた富山県など、日本海側にヒノキが分布しないためかもしれません。 太平洋側ではスギよりもヒノキの方が木材としての値段が高いので植林が多く、その調査研究を進める意義がありました。
発表から1年が経ちますが、
現在の取り組みや今後については。

 今は品種登録や実用化のための調査研究を進めています。 ただ、今回見つかった無花粉ヒノキは先ほどのスギとは違って両性不稔というもので、これは花粉が飛散せず種子も正常に形成しないので、種子を増やして苗木を作ることができません。 そこで、現在はさし木によって20本ほどの苗木を育てていますが、種子を生産できる雄性不稔のみの性質を持ったヒノキの探索も引き続き実施していく方針です。
  普及するためには種子で増やす方が遺伝的に多様性が高く、さし木による増殖はいわゆる単一のクローンになるので、病害虫や台風の被害を受けやすいというリスクがあるのです。

苗畑で育成中の無花粉ヒノキ「秦野1号」と斎藤さん 
花粉症患者にとって気になるのは
今後どれくらいで症状に苦しまずに
済むのかということですが。

 いつになったら花粉症がなくなるか、というのはなかなか難しく、できるだけ少ないレベルには持っていきたいなと考えています。

 同じ量の花粉を吸っても発症する人もいればしない人もいるわけで、その絶対値を減らせば、必然的に患者数も減らすことにつながりますので。
無花粉のスギやヒノキが増えることによる
デメリットなどはないのでしょうか。

 今回発見された無花粉スギ・ヒノキは自然に発生した遺伝子の突然変異によるもので、いわゆる遺伝子組み換えではありません。

 また、よく心配されるのは、種子ができなくなったり、自然林と交配しておかしな種子ができたりしないかということですが、そもそも無花粉で花粉ができないので、周りの林に影響せず、そういった心配ごとはないですね。
では最後に、
私たち市民に何かできることは
ありますでしょうか。

 お話した通り、無花粉のヒノキは実際に山で見つけています。 皆さんが探すことはなかなか難しいかと思いますが、もしそういった存在に気づかれたらご連絡をいただければありがたいですね。

  それと、神奈川県では森林循環のため、県産木材の普及利用に力を入れていますが、皆さんが探すことは県内産の材木を使っていただいて林業がうまく回れば、そのぶん無花粉スギやヒノキの割合も少しずつ増えていくことにつながります。 その点も少し意識してご協力いただければありがたいと思います。

(おわり)

秦野市・伊勢原市境の浅間山付近の人工林。
無花粉ヒノキは秦野市内の山林で発見された。
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2014ミドリ95号 「無花粉ヒノキの発見と無花粉スギの広がり」


神奈川県自然環境保全センターへ
無花粉なのにどうして増えるの?
③無花粉スギ、ヒノキの広がり

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