機関誌「ミドリ」について


2014 ミドリ95号「無花粉ヒノキの発見と無花粉スギの広がり(1)」

ミドリ95号
2014年冬号


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はじめに  毎年春になると苦しむ人の多い花粉症。 近年では社会問題と言えるほどの広まりを見せている中で、2013年12月に神奈川県で全国初となる無花粉ヒノキの発見が発表され、大きな話題となりました。

 一方、日本で最大の花粉症要因であるスギに関しても、1992年に富山県で初めて無花粉スギが発見され、神奈川県でも2004年に見つかってから研究や苗木の生産・出荷が進められています。

 これらはどのように行われているのでしょうか。
 
 

神奈川県自然環境保全センター本館。
かながわ県産木材を使って2009年に建てられた。

―厚木市にある神奈川県自然環境保全センターの主任研究員、齋藤央嗣さんにお話を伺いました。
斎藤
 当センター研究連携課は元々林業試験場だった機関で木の品種改良といった研究も行っていました。
 私は1995年に今の仕事を引き継ぎましたが、神奈川県は大都市を抱えるという地域性もあり、花粉症対策をメインに調査研究を実施しています。

 神奈川県では1998年に優良スギの精英樹から花粉の少ないスギ17品種を選抜し、2000年にはその種子を生産する採種園を整備しました。 これらは在来品種に比べると8割ほど花粉が少ないもので、生産した種子を苗木生産者に配布しています。 ヒノキについても同様に花粉の少ない品種を選抜し、2005年から苗木生産を進めて2008年には出荷も開始しました。

 ただ、花粉が少ないというのは相対的なもので、個体が大きくなるとどうしても着花しやすくなるという可能性もあるため、これを何とか無花粉にできないかと思っていたのですね。 富山県では1992年に無花粉スギが見つかったのですが、その後の研究過程で無花粉スギは5,000本に1本くらいの確率で存在するということが報告され、では神奈川県でも探してみようということになりました。

 そして、先ほどの少花粉スギの実生個体888本の中から1本だけ無花粉スギが見つかったのが、2004年のことです。 秦野市の田原に試験地があったため、「田原1号」という名前をつけました。 これを増やしていくために外からほかの花粉が入らない温室内の採種園を整備し、2008年から苗木生産を開始して実用化を図っています。

(つづく)
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2014ミドリ95号 「無花粉ヒノキの発見と無花粉スギの広がり」

目次
①神奈川県自然環境保全センターへ
無花粉なのにどうして増えるの?
無花粉スギ、ヒノキの広がり  

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