機関誌「ミドリ」について


2014 ミドリ95号「無花粉ヒノキの発見と無花粉スギの広がり(2)」

ミドリ95号
2014年冬号


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無花粉なのにどうして
種子を増やすことができるのでしょうか
斎藤
 富山県や神奈川県で見つかった無花粉スギはいわゆる雄性不稔というもので、花粉をつくる雄花はできますが花粉が飛散しないという特徴があります。

一方、雌花は受粉して正常な種子を形成することができます。 また、無花粉スギはメンデルの法則でいう劣性遺伝するという特徴があり、対になっている遺伝子2本のうち1本の遺伝子が無花粉である(Aa)と正常の花粉を作り、2本揃う(aa)と無花粉になります。

この性質を利用し、母親に無花粉の遺伝子を2本持つ無花粉スギ(aa)、父親に無花粉の遺伝子を1本持つ有花粉スギ(Aa)を掛け合わせると、無花粉スギ(aa)と有花粉スギ(Aa)が1:1の割合で生産できるという仕組みです。

神奈川県では現在、年間1,000本くらいの無花粉スギの生産を行っています。 少花粉スギに関しては関東地方でもかなり普及が進んでいますが、無花粉スギを供給ベースで生産出来ているのは、全国でもまだ神奈川県と富山県くらいですね。


無花粉スギの雄花(左)と雌花(右)
花粉を出さないが雄花、雌花ともに着花する。 
では昨年発表された無花粉ヒノキの方は。

実は神奈川県では、無花粉スギを見つけた2004年よりも前から無花粉ヒノキの研究も行っていました。 なかなか発見することができなかったのは、ヒノキの方が花が小さくて判別しにくかったこと、スギと違って花粉が飛散の直前に形成されるため、無花粉かどうかの判断が難しかったことなどが理由としてあげられます。
 苗木における調査はうまくいかなかったのですが、実際に山で探してみれば、スギとヒノキは近縁なので同じように5,000本に1本くらいは見つかるのではないかということで、2011年から県内のヒノキ林を対象に調査を行いました。 この年は約2,800本調べて1本も見つからなかったのですが、翌年約1,200本を調べた

うち、1本だけ無花粉のヒノキが見つかりました。 そこで、さし木を行うと同時に親木の調査も翌年あわせて行い、遺伝的に固定された形質だということが確認できたので、昨年12月に発表しました。 この木は秦野市内のヒノキ林で見つかったため、「秦野1号」という仮称がつけられています。 現在も無花粉ヒノキは、全国でこの1本しかまだ見つかっていません。

無花粉スギの種子生産用の母樹
交配時期に温室へ移動させるため、コンテナで育成している。 
なぜ神奈川県で初めて見つかったのでしょうか。
斎藤 こういった地道で確率論的な調査研究を行っている
地域が、神奈川県のほかになかったというのも理由のひとつでしょうね(笑)。 それと、無花粉スギの研究の進んでいた富山県など、日本海側にヒノキが分布しないためかもしれません。 太平洋側ではスギよりもヒノキの方が木材としての値段が高いので植林が多く、その調査研究を進める意義がありました。
   (つづく)
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2014ミドリ95号 「無花粉ヒノキの発見と無花粉スギの広がり」

目次
神奈川県自然環境保全センターへ
②無花粉なのにどうして増えるの?
無花粉スギ、ヒノキの広がり

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表紙:丹沢の山林(松田町寄)

自然へ一歩 冬の雑木林でかくれんぼ 向田智也
ようこそ森へ 無花粉ヒノキの発見と無花粉スギの広がり 
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