機関誌「ミドリ」について


2015ミドリ97号「英国ザ・ナショナル・トラストのいま。(後編)」その3

ミドリ97号
2015年夏号


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―最後に、ボランティア活動について。
小野まり
 英国におけるボランティア活動はトラスト以外にも数多くあります。赤十字などの非営利組織のショップも各街にあり、ボランティアによって運営されています。組織のトップ数人だけが有給で、ほとんどボランティアで成り立っています。

 日本に比べると医療が無料で受けられるなど、社会福祉がしっかりしているので、高齢者が元気に安心してボランティア活動に専念できるのかもしれません。 

 ボランティアという地域社会の支えによって自然環境保全と観光が両立して、ナショナル・トラストが発展しています。

写真:イングランド南東部にあるウィンストン・チャーチルの邸宅、チャートウェル(Chartwell)。手前のご夫人はガーデンガイドのボランティア。

小野琢正
 プロパティを100ヶ所以上巡りましたが、地元ボランティアによって地域社会が栄えています。敷地内を走る電動車の運転手や村の案内人などみんな活躍しています。もちろん仕事は程々に、アフターヌーンティーを楽しみながらです。

 トラストのプロパティでも、ガイドにしろ、保全活動にしろ、ボランティアなしには成立しません。トラスト本部がしっかり資金を集め、充実した企画を作り、ボランティアはその中で変わらない体制で活動を続ける。それが、自然景観と歴史的建造物を保全するナショナル・トラストの仕組みなのです。


写真:コッツウォルズにあるロッジ・パーク(Lodge Park)で行われたイベント。テントごとに中世時代の暮らしや手作業を再現している。こうした手のこんだイベントもボランティアに支えられている。

      

(おわり)



2015ミドリ97号「英国ザ・ナショナル・トラストのいま。(後編)」

目次
後編その1 ワーキングホリデー
後編その2 リーマン・ショックを乗り越えて
③後編その3  積極的なボランティア活動


=プロフィール=
小野琢正氏
 独自の「水性」シルクスクリーン版画を生み出し、国内外の美しい自然を描き続ける。1999年日本ナショナル・トラスト協会のオフィシャル・アーティストとして英国に渡り、トラスト保全地を描く。
 2001年からトラスト保全地で、日本人として初めて3ヶ月に及ぶ巡回展「HENRO」展を開催。その後も英国ナショナル・トラストにて毎年開催され、今年で15年目を迎える。
(オフィシャルページ http://www.takumasaono.co.uk)

小野まり氏
 NPO法人ザ・ナショナル・トラストサポートセンター代表及び同英国事務局長。著書に「図説・英国ナショナル・トラスト紀行」「図説・英国湖水地方」「図説・英国コッツウォルズ」「図説・英国インテリアの歴史」(河出書房新社)などがある。(ザ・ナショナル・トラストサポートセンター http://ntscj.org)

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自然へ一歩 ムサシノキスゲ 浅野文彦
トラストリポート インタビュー/英国ザ・ナショナル・トラストのいま。(後編) 小野琢正、小野まり
トラストニュース 財団創立30周年を迎えて 
 財団理事長 川本守彦
フィールドノート わかりやすい絶滅危惧種と、そうでないものたち 秋山幸也
イベント 森林ボランティア、自然観察会など
事務局だより おたよりほか