機関誌「ミドリ」について


2015ミドリ97号「英国ザ・ナショナル・トラストのいま。(後編)」その2

ミドリ97号
2015年夏号


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―ナショナル・トラスト活動が盛況ですね。
小野まり
ですが、英国でも2008年のリーマンショックによって、経済がガタガタになったとき、団体の組織でも大きな改編がありました。それまで1人のマネージャーに1つのプロパティだったのを、1マネージャー3プロパティ(地域マネージャー)にしたりしています。

 その昔はインターナショナル部門もあり、日本語のガイダンスもあって観光客に手厚いサービスがありましたが、今はネット情報だけです。
 イメージ戦略も若い事務局メンバーにより刷新され、WEBサイトでも景観重視の写真が中心だったこれまでのイメージが、子供やボランティアしている大人などを中心に置くなど、アピールする視点が変化しています。

 なにより、大きいイメージ転換として、オリジナル商品から、「The“ザ”」がなくなりました。「ザ・ナショナル・トラスト」の特定の固有名詞である、ここが本家本元ですよという「ザ」が、保守的であり、古臭いということから、取ったわけです。さらにロゴの色も深緑から明るい黄緑に変わりました。

 それに憤慨して、ボランティアをやめる人も続出しました。ボランティアに配られる名札があるのですが、その新しい色が気にいらなくて、新しいロゴカラーの名札をもらったお爺ちゃんが怒って、池に投げ捨てているのを見ました。こんなの付けていられるかって!(笑)
 

写真:ストラトフォード・アポン・エイヴォンにあるチャルコート・パーク(Charlecote Park)。
シェークスピアが活躍した中世時代を再現。コスチュームに身を包んでダンスを披露しているのはもちろん、地元のボランティアの人たち。

―プロパティ自体のメンテナンスや保全などに影響はないのでしょうか。
小野琢正  ボランティアスタッフはこれまでどおり活動しているので、運営側が変わろうとそのまま続けています。方法やスキルはボランティア同士が受け継いでいるわけです。

 いわゆるお茶会場所は変わらない。元々ボランティアは地元の方なので、おらが村のシンボルを守る、という誇りがあってボランティアが代々保全してきました。上の方針が変わったところであまり影響は受けないのです。
小野まり  ただし、経費削減の波がボランティアルームにもやってきて、いつもなら机にあるはずの5皿のケーキが、突然3皿になった。お茶会文化ですから、みんな怒って大変でしたよ。どう切れば、みんなに分けられるのよって!
      後編その3へ

2015ミドリ97号「英国ザ・ナショナル・トラストのいま。(後編)」

目次
後編その1 ワーキングホリデー
②後編その2 リーマン・ショックを乗り越えて
後編その3  積極的なボランティア活動


=プロフィール=
小野琢正氏
独自の「水性」シルクスクリーン版画を生み出し、国内外の美しい自然を描き続ける。1999年日本ナショナル・トラスト協会のオフィシャル・アーティストとして英国に渡り、トラスト保全地を描く。
 2001年からトラスト保全地で、日本人として初めて3ヶ月に及ぶ巡回展「HENRO」展を開催。その後も英国ナショナル・トラストにて毎年開催され、今年で15年目を迎える。
(オフィシャルページ http://www.takumasaono.co.uk)

小野まり氏
 NPO法人ザ・ナショナル・トラストサポートセンター代表及び同英国事務局長。著書に「図説・英国ナショナル・トラスト紀行」「図説・英国湖水地方」「図説・英国コッツウォルズ」「図説・英国インテリアの歴史」(河出書房新社)などがある。(ザ・ナショナル・トラストサポートセンター http://ntscj.org)

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トラストリポート インタビュー/英国ザ・ナショナル・トラストのいま。(後編) 小野琢正、小野まり
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 財団理事長 川本守彦
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イベント 森林ボランティア、自然観察会など
事務局だより おたよりほか