機関誌「ミドリ」について


2017ミドリ106号「引地川源流の森 泉の森」その2

ミドリ106号
2017年秋号


ミドリ106号

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  泉の森の生きものたち
 泉の森は水辺の環境も豊かで、約600種の植物や約80種の野鳥をはじめ、多種多様な生きものを観察できます。

アジサイ・ヒガンバナ
泉の森を彩る四季折々の花
 新聞やタウン誌に写真付きで掲載されることもあるのは、ソメイヨシノやアヤメ、ハナショウブ、アジサイ、ヒガンバナなどの植物です。 ソメイヨシノはしらかしの池の周囲に植栽されており、ほかにもヤマザクラやカスミザクラなども園内にあります。 園内のショウブ田には、アヤメやハナショウブがそれぞれ約1,000株植栽されており、初夏の泉の森を彩ります。ハナショウブは江戸時代頃から品種改良されてきた園芸種で、色や花弁の形、開花する時期なども様々です。 アジサイは園路に沿って約1,000株植栽されており、日当たりや土壌環境によって咲き具合は様々ですが、ハナショウブとともに来園者を楽しませてくれます。 花をつけた後は、財団職員とボランティア共同で剪定しています。 9月中旬には約100mの長さがある斜面にヒガンバナが開花します。 ヒガンバナといえば赤い花を想像する方が多いと思いますが、ここでは白い花やクリーム色(赤と白の中間色)の花もあり、花期は短いですが道行く人々を楽しませてくれます。
 
センダイタイゲキ
 園内にある大和水源地は神奈川県企業庁が管轄しており、周囲をフェンスで囲われて普段は人が立ち入れません。そのため、年に数回企業庁から許可をもらい、ボランティアが植物調査を実施しています。
 その際、種名がわからない植物が見つかり、ボランティアが専門機関に調査を依頼したところ、国のレッドデータブックに掲載されている絶滅危惧ⅠB類の「センダイタイゲキ」であることが判明し、神奈川県では初記録でした。どのような経緯でここに生育しているのかは不明ですが、普段は人が立ち入れないエリアということもあり、現在でも大切に保護されています。

トンボ
 泉の森の南には、水と緑と花をテーマとした公園「ふれあいの森」が隣接しており、泉の森と同時期に整備され、散策コースとして来園者の多い公園です。 当初、園内を流れる引地川はコンクリート三面張りで施工されていました。 生きものは減り、川で遊ぶこともできず、川は大量のゴミであふれていました。 そこで平成5年にコンクリートをはがして、護岸にヤシ繊維ネットを広げてヤナギを植栽するなどの「多自然型護岸」に変更しました。 すると、様々な魚や昆虫が川に戻ってきて、一時は個体数が激減したハグロトンボも姿を見せるようになりました。 ボランティアが魚類やトンボの調査を毎年実施しており、年によっては泉の森内の調整池水没等による影響がありますが、例年約25種類のトンボが確認されています。

セミ
 泉の森では、5種類のセミ(アブラゼミ、ミンミンゼミ、ヒグラシ、ツクツクボウシ、ニイニイゼミ)が見られます。
 大和市環境総務課では、2002年から毎年セミのぬけがら調査を実施しており、市内のどの地域でどのセミのぬけがらが発見されたのかを記録しています。
 ここ数年は、南方系のセミであるクマゼミのぬけがらも市内でいくつかの発見されてきており、今後も地球温暖化やヒートアイランド現象によって数が増えることが予想されています。 なお、泉の森で発見されるぬけがらは、アブラゼミが最も多く、次にミンミンゼミ、ヒグラシ、ツクツクボウシ、ニイニイゼミと続きます。
 ぬけがら調査の他にも、セミの羽化観察会も開催しています。

チョウ
 チョウの幼虫は特定の植物のみを食草として利用することが多いですが、泉の森には多様な植物が生育していることから、様々なチョウを観察することができます。
 1987年以降は姿を消していたジャコウアゲハも、2013年頃から確認できるようになり、食草であるウマノスズクサを保護しています。
 また、来園者が自然に親しむための小冊子「大和の自然ハンドブック」を発行し、しらかしのいえで無料配布しています。 毎年テーマを変更して発行しており、2017年3月にはチョウをテーマとしました。 ボランティア協議会員の中から有志で編集委員を募って、写真提供や掲載内容の協議などで協力してもらい、大和市でのチョウ観察に適した冊子としてまとめられています。

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2017ミドリ106号「引地川源流の森 泉の森」その2

目次
その1 泉の森の成り立ち
②その2 泉の森の生きものたち
その3  泉の森の生きものたち2

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表紙:ターン・ハウズ湖

自然への一歩 桜ケ丘 親子むしとり大会
ピーターラビットTM
ナショナル・トラスト[後編]
大東文化大学教授 河野 芳英
自然への一歩 憩いの場 大和市泉の森
引地川源流の森 泉の森
しらかしのいえ 石丸 勇介
一里塚・
四方山話2⃣
「シカの声」
神奈川森林インストラクター 石原 和美
平成28年度
事業報告及び決算報告
イベント 各種イベント・森林づくり活動ほか