自然環境学習システム

里山の将来をみんなで考えよう

里山の自然は多様である

里山には、雑木林、伐採跡地、田畑、小川、民家などがモザイク状に存在するため、様々な生き物が生活している。
たとえば、雑木林には多くの野鳥や昆虫が棲み、構成する植物の種も多い。伐採された所には一時的に草地環境となり、草原や低木、林縁に生息する野鳥や昆虫が棲みつき、先駆性の植物が一斉に繁茂する。やがて林の遷移が進むと元の雑木林に戻る。手入れのサイクルに合わせて生物相も変化していくのである。

水田にはカエルやトンボ、タイコウウチ、カヤネズミ、イタチなど湿地性の生き物が生息し、小川にはメダカやエビ類などが生息する。

民家や畑の周りには、スズメやムクドリ、カワラヒワ、モンシロチョウやテントウムシなどが生息する。

このように、生き物は生息環境を棲み分けて生活しているので、環境要因が多様な里山は、それだけ収容量が高く、多種多様な生物相を支えることができる。里山では人も含めたひとつの生態系が成り立ってきた。里山の生き物も長い年月をかけて人の生活に適応し、共存してきた貴重な生物群である。古くから私たちの先祖が付き合ってきた、昔話や童謡にも登場するこうした生き物たちを大切にしたい。

利用されなくなった里山の雑木林

ひと昔前の里山の景観を一望すると、一面を覆う雑木林があり、切れ込むような谷戸にある水田は湧水によって潤されている。周辺には茅葺き屋根の民家が点在し、その裏には竹林やスギ林が見え、雑木林には様々な草花があった。まさに、人々が生活に利用してきた里山の姿がそこにはあった。

現在、里山は利用されず、放置されたままになっているところが多い。コナラやクヌギが大木化し、萌芽更新の適期を越えた40~50年生となっている。アズマネザサや低木が繁茂して林床は藪になり、カシ類などの常緑樹の侵入が見られる。人の営みと共に維持されてきた里山は時代の流れと共に消え去るのか?

里山を今後どう扱っていくか、

里山は農村の人たちが農業や林業生活とともに維持管理して来た。もともと里山は、自然を保護するためではなく、薪や炭、木材、山菜やキノコ、そして稲や作物の生産の場として持続的利用の経営管理から生まれたものである。

里山の崩壊や衰退は、薪炭林や農用林の利用が減ったことや、複雑な地形から生産効率が悪く、米の価格低迷など経済的な事情や宅地開発行為など、多様な要因によるためと考えられる。

このまま進む里山の衰退に対して、われわれはこれからどう関わっていったらよいのだろうか?

たとえば雑木林の管理作業を考えた場合、現在では、以前のような薪炭などの生産的役割は失われたが、環境保全機能、生き物の生息環境としての機能、あるいは教育的機能など、雑木林が担っている社会的役割は以前にも増して大きいと言える。

森林を健全に保つために、あるいは目的とする林相へ誘導するために、更新作業、管理作業は必要である。本来は、以前のように人々の生活に密着した雑木林管理が理想であるが、社会状況の変化にともない現代においてそれを実現することは困難である。里山の森林資源はほとんど利用されていないのが現状で、これからの時代にあった新しい考え方で、現代的な里山の利用・管理を考える必要がある。

農村の生活と結びつきが弱い現在では、市民の力が必要になる。地権者、地域住民、専門家、行政など、多くの関係者を交えて、里山の価値を見い出し、管理計画を建ててみるとよいだろう。農林業従事者が市民に管理技術を提供することによって、それが農村の活性に役立つかも知れない。

市民参加による里山管理の試みは、1980年代の後半に神奈川県をはじめとして全国で行われるようになった。現在、神奈川県全域で500ヘクタールを超す森林が市民によって保全されている。神奈川県自然環境保全センターでは、研究成果や県内各地の市民活動の実績を踏まえて、市民が主体的に雑木林の保全活動を行うための『市民による里山林整備指針』を作成した。

http://www.agri.pref.kanagawa.jp/sinrinken/satoyama/mokuji.htm

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