機関誌「ミドリ」について


2017ミドリ107号「葛葉緑地で地質学にふれる」その2

ミドリ107号
2017年冬号


ミドリ107号

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3.現地案内

写真2:図3の①露頭左側の崩落
崩落で上部が良く見えるようになった(2012年1月撮影)
(1) くずはの家
 葛葉緑地の大きな特徴は、秦野市が設置した「くずはの家」という自然観察施設があることです。 ここには親切な専門スタッフが常駐し、訪れる人の対応や様々なイベントを行っているほか、多くのボランティアが参加して、その活動を支えています。 観察は「くずはの家」で状況を聞いてから始めるのが良いでしょう。 大雨の時は川が増水して、注意を要する場合もありますし、鹿除けのネットを張っている箇所もあります。 ヒルが出る季節には、ヒル除けの食塩水が準備されています。
 

図3:葛葉緑地の露頭
①と②の上部に軽石層を含む関東ローム層が見られる。
他は主にレキ層の露頭

(2) 露 頭
 地層の観察は「露頭」と言われる植生(以下、本誌に因んで“緑“と呼ぶことにします)の無い場所で行います。 このような場所は、最近何らかの原因で崩れた所です(写真2)。 崩れても時間経過とともに、緑に覆われて行きますので、露頭は言わば“生きもの”のような存在です。 図3は2017年9月現在の露頭の状況です。 見えにくくなっているかもしれませんし、新たな露頭が誕生しているかもしれませんので、最新情報は「くずはの家」にお尋ねください。 緑地に行って緑の無い所を探すのは、変な気がしますが、地層に興味の無い人は崩れた場所がどのように植物に覆われていくのかを、時間をかけて観察するのも良いでしょう。
 

写真3:段丘レキ層の露頭
③付近、中央部にはレキのないローム質の部分がある。

(3) 段丘レキ層
 露頭は河岸段丘の断面なので、川のレキ層(段丘レキ層)が見られます(写真3)。 レキは侵食によって崩れると、今の河原のレキと混ざってしまいます。 河原のレキは上流の山からもたらされるものですが、このように途中で混入するレキもあります。
 レキ層は1層ではなく、関東ローム層(赤土)を挟んで何層かありますが、レキ層と関東ローム層は共に陸上で堆積した地層です。 違いは川が流れていたか、いなかったかです。 関東ローム層は洪水でも水に浸からない場所で堆積しますので、当地は川の流路になったり、ならなかったりを繰り返してきた事がわかります。 レキの種類や大きさ、形は今の葛葉川のレキに似ているので(写真4)、レキ層を作った川は現在の葛葉川と同じ表丹沢に源をもつ川と推定されます。 葛葉川には角の十分取れた円礫はあまりありません。 これは山に近いためで、昔も丹沢山地との距離はあまり変わっていないことが推定されます。
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2017ミドリ107号「葛葉緑地で地質学にふれる」その2

目次
その1 葛葉緑地の地形-段丘崖の緑-
②その2 現地案内
その3  関東ローム層

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表紙:ヤマユリ

自然への一歩 冬から春へ 池のにぎわい
阿木 二郎   手塚 真理
葛葉緑地で地質学にふれる
生命の星・地球博物館 学芸員 笠間 友博
光るミミズって見たことある?
~葛葉緑地はいろいろな生き物に出会えるよ~
自然観察施設・くずはの家 所長 高橋 孝洋
葛葉緑地 アクセスMAP
緑の募金
平成29年度
緑化運動・育樹運動コンクール受賞作品
緑の募金 緑の募金による活動報告
一里塚・
四方山話3⃣
「ムササビ」
神奈川県森林インストラクター 滝澤 洋子
事務局だより ●小網代の森
 アカテガニ放仔観察会2017
●感謝状贈呈、主催イベント ほか
ヤマユリ自生地
再生チャレンジ始動
久田緑地での
取組事業
製材体験イベント