機関誌「ミドリ」について


2017ミドリ106号「引地川源流の森 泉の森」その3

ミドリ106号
2017年秋号


ミドリ106号

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泉の森の生きものたち2
カエル
 園内のカエルはウシガエルが最も数が多いと考えられていますが、その次に多いのがアズマヒキガエルです。 カエルといえば水辺に生息していると思われがちですが、アズマヒキガエルは森に生息するカエルで、小さな昆虫などを食べて成長します。 アマガエルとともに人に馴染み深いカエルですが実は毒があり、目の後ろにある耳腺という器官から毒液を分泌するので注意が必要です(ヒキガエルが命の危険を感じなければ、毒液を分泌することはないそうです)。
 また、しらかしのいえの脇にある池では、2月下旬~3月上旬の暖かい日に冬眠から覚め、大量のアズマヒキガエルが群れ集まって繁殖する「蛙合戦」が繰り広げられます。
  1匹のメスをめぐって多数のオスが団子状になることも多く、勝ち抜いたオスだけが抱接(生殖口を近づけ、メスが産んだ卵にオスがただちに精液をかける行為)をすることができます。 卵は産み付けられてから1週間程度で孵り、6月頃に変態して地上にあがって、森の中へ向かいます。 なお、卵塊の卵は1,500~8,000個にも達しますが、成体になれるのはごくわずかです。

シマヘビ

 泉の森には、5種類のヘビ(アオダイショウ、シマヘビ、ヒバカリ、ヤマカガシ、シロマダラ)がいると考えられています。
 アオダイショウとシマヘビは、ひなたぼっこして体温を上昇させたり、池をすいすい泳いだりする光景を園内でよく見かけます。
 シマヘビはしらかしのいえ館内で2011年7月から飼育展示しており、間近で観察することができるので、来館者から「シマちゃん」と呼ばれるしらかしのいえのアイドルです。 脱皮殻も展示しているので、ヘビがどの程度の期間でどれぐらい成長するのか、胴体と尾の境目(総排出孔)の位置などを確認することができます。

しらかしの池で見られる鳥
 しらかしの池には展望デッキや水上に造られたふれあいステージがあり、野鳥を観察しやすくなっています。
 8ページの「自然への一歩」にもイラストが掲載されているカワセミをしらかしの池でよく観察することができます。 カワセミの写真撮影を目当てに来園しているカメラマンも多く、インターネットで「泉の森 カワセミ」と検索すると多くの写真が掲載されています。 自転車のブレーキ音のような鳴き声で、泉の森では水の中に飛び込んで小魚やアメリカザリガニを捕まえる様子をよく見かけます。
 ほかにも潜水が得意なカイツブリ、クイナの仲間であるバンなどは、しらかしの池で繁殖することもあります。 特に、カイツブリは親が幼鳥を背に乗せて泳ぐ様を観察できることもあります。
 冬になると、北の国から冬越しのため渡ってくる冬鳥が泉の森にもやってきます。 ヒドリガモ、キンクロハジロ、ホシハジロ、コガモなど、多くのカモたちをふれあいステージから間近で観察することができます。
 ほかにも、落葉樹が葉を落として鳥を観察しやすくなるので、冬の泉の森はバードウォッチングに最適です。
 
外来生物問題
 さまざまな生物が生息する泉の森ですが、外来生物も多数生息しており、在来生物にさまざまな悪影響を及ぼしています。  水辺には、特定外来生物である「ウシガエル」や「アメリカザリガニ」が大量に生息しており、在来生物に大きな影響を与えています。 どちらも容易に捕獲できず繁殖力も高いので、対策に苦労しています。
 最近は確認されていませんが、カミツキガメやオオクチバス、ブルーギルが捕獲されたこともありました。 品種改良されたメダカや金魚など、自然界には存在するはずのないペットの遺棄も悩ましい問題です。 スッポンなども見つかっていますが、これも飼育個体が遺棄されたものだと考えられています。
 しらかしの池にいる大きな「コイ」も外来種です。 以前は水質改善のために放流されることもあったようですが、コイは水底の泥を巻き上げることで水草に悪影響を与えるほか、在来の小魚やヤゴなどの水生生物を捕食します。 園内では禁止されていますが、来園者によるエサやりで水質が悪化している側面もあります。
 実は、日本にいるコイは大陸から輸入された外来種で、在来種である「ノゴイ」は唯一琵琶湖の一部にしか生息していないのです。 コイに姿が似ている大型外来魚「ソウギョ」も確認されており、どちらも身体が大きいことから、泉の森の生態系にかなり悪影響を与えていると考えられています。
 また、在来種でも国内他地域から人為的に移入されたものは「国内外来種」や「国内移入種」と呼ばれており、泉の森を含む引地川水系では「ドンコ」という本来関西や九州にしかいないハゼの仲間が急増しています。 全長は最大で25cmにもなり、その大きな口でさまざまな水生生物を捕食するため、生態系への悪影響が懸念されています。
 外来生物問題を引き起こすのは動物だけではなく、植物も同様です。 繁殖力が非常に高く、在来植物の生育場所を奪うものが多いですが、棘があり危険な植物もあります。
 特定外来生物のアレチウリをはじめとしてナガミヒナゲシやワルナスビ、オオブタクサ、キショウブ、セイタカアワダチソウなどが泉の森にも生育しており、発見し次第できるだけ駆除するようにしています。
 ほかにも、しらかしのいえの行事で外来種を使用した草木染めを年2回開催したり、親子が集まるイベントにブースを出展したりするなど、外来生物問題を多くの方に知ってもらうためにさまざまな取り組みを行っています。
 
自然観察センター しらかしのいえ
      おわり

2017ミドリ106号「引地川源流の森 泉の森」その3

目次
その1 泉の森の成り立ち
その2 泉の森の生きものたち
③その3  泉の森の生きものたち2
石丸 勇介
公益財団法人大和市スポーツ・よか・みどり財団職員 大和市自然観察センター・しらかしのいえに勤務し、園内の案内や事業の企画・運営などに従事している。

大和市 泉の森
〒242-0029 大和市上草柳1728番地
046-264-6633(自然観察センター)

アクセス
電車の場合
●相鉄線 相模大塚駅から徒歩約15分
●相鉄線・小田急線 大和駅から徒歩約25分

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表紙:ターン・ハウズ湖

自然への一歩 桜ケ丘 親子むしとり大会
ピーターラビットTM
ナショナル・トラスト[後編]
大東文化大学教授 河野 芳英
自然への一歩 憩いの場 大和市泉の森
引地川源流の森 泉の森
しらかしのいえ 石丸 勇介
一里塚・
四方山話2⃣
「シカの声」
神奈川森林インストラクター 石原 和美
平成28年度
事業報告及び決算報告
イベント 各種イベント・森林づくり活動ほか